Notes® のシングルユーザーからマルチユーザーへの移行支援ツールを使用する

単一の Notes® リリース内で、既存の Notes® シングルユーザーインストールまたはシミュレートされたマルチユーザーインストールから真の Notes® マルチユーザーインストールに変換するには、この手順を使用します。移行が完了したら、Notes® マルチユーザークライアントのリリースレベルをアップグレードすることができます。

始める前に

  • トピック「Notes® のシングルユーザーからマルチユーザーへの移行支援ツールについて理解する」の情報を確認してください。
  • このツールを実行するには、データのコピーと移動に必要な許可が得られるように、管理者として Windows にログインする必要があります。
  • ツールを実行する前に、Notes® クライアントのバックアップを検討してください。詳しくは、このトピックの末尾に記載されたリンクに含まれる記事「Backing up and restoring Notes® client data」を参照してください。
  • ユーザーが新しい移行先ディレクトリーに対して必要な読み取り/書き込み/削除許可を持っていることを確認してください。

このタスクについて

手順

  1. Notes® アプリケーションを終了します。Notes® を実行しながら移行することはできません。
  2. Notes® インストールキットの Utility フォルダで、MUMigrationAssistant.vbs ファイルと MUMigrationAssistant.ini ファイルを見つけます。
  3. MUMigrationAssistant.vbs スクリプトを開き、埋め込みドキュメントを確認します。
  4. テキストエディタで MUMigrationAssistant.ini 設定ファイルを開き、以下の値を指定します。
    オプション説明
    CURRENTINIPATH (必須) NOTES.INI ファイルの現在の場所を指定します。ユーザーのデータディレクトリーの場所は NOTES.INI ファイルから取得されます。
    NOTESPROGRAM (オプション) ユーザーの notes.exe ファイルの現在の場所を指定します。これを指定しない場合は、最初に Windows レジストリ (バージョン 8.5.x 以前の場合は HKLM/SOFTWARE/Notes/version/Path、Notes 9.0 以降の場合は HKLM/SOFTWARE/Notes/Path) で場所の判別が試行された後、ユーザーの NOTES.INI ファイルで判別されます。
    MULTIUSERBASEDIR (オプション) ユーザーのデータディレクトリーの移行先を指定します。ツールの実行時に、指定されたディレクトリーが存在するかどうかと、このディレクトリーに対する読み取り/書き込み許可があるかどうかが確認されます。ツールによって、Notes\Data (Notes® 9.0 より前のバージョンの場合) または HCL\Notes\Data (Notes® 9.0 以降のバージョンの場合) が自動的に付加されます。この値を設定する場合は、MULTIUSERBASEDIR%USERNAME% を含める必要があります。MULTIUSERBASEDIR の値を指定しない場合は、デフォルト値 CSIDL_APPDATA が使用されます。
    重要: この設定に値を指定する場合は、MULTIUSERCOMMONDIR にも値を指定する必要があります。
    MULTIUSERCOMMONDIR (オプション) 共通の共有データディレクトリーの場所を指定します。ツールの実行時に、移行されるデータを所有するユーザーに、指定されたディレクトリーに対する読み取り許可があるかどうかが確認されます。

    値を指定した場合は、その値に %USERNAME% 環境変数が含まれているかどうかがチェックされます。MULTIUSERCOMMONDIR の値を指定しない場合、デフォルト値 CSIDL_COMMON_APPDATA が使用されます。

    ツールによって、Notes\Data (Notes® 9.0 より前のバージョンの場合) または HCL\Notes\Data (Notes® 9.0 以降のバージョンの場合) が自動的に付加されます。

    重要: この設定に値を指定する場合は、MULTIUSERBASEDIR にも値を指定する必要があります。
    DRYRUN (オプション)
    • True (デフォルト) - ツールの実行時に、実行結果として生じる変更内容を示すレポートが生成されますが、移行は実行されません。
    • False - ツールの実行時に、移行が実行されます。
    MIGRATE_REGISTRY
    • True - HKLM レジストリ設定が移行され、すべてのユーザーのデスクトップショートカットと [スタート] メニューのショートカットが更新されます。
    • False - レジストリ設定の移行もショートカットの更新も行われません。

    シミュレートされた Notes® マルチユーザーインストールから移行する場合は、cscript コマンドの実行時にコマンドプロンプトでこのオプションを指定できます。

    MIGRATE_USER_REGISTRY
    • True - レジストリ設定が移行され、ツールを実行するユーザーのみのデスクトップショートカットと [スタート] メニューのショートカットが更新されます。
    • False - レジストリ設定の移行もショートカットの更新も行われません。

    シミュレートされた Notes® マルチユーザーインストールから移行する場合は、cscript コマンドの実行時にコマンドプロンプトでこのオプションを指定できます。

    MIGRATE_SHARED_DIR
    • True - すべてのユーザー間で共有される共通データファイルが移行されます。これらは、Notes® マルチユーザーインストールの実行時に共通の共有ディレクトリーにインストールされたファイルです。
    • False - 共通データファイルが移行されません。

    ユーザーのテンプレートなど、移行するファイルが他にもある場合は、それらをファイルにリストし、次の設定 MIGRATE_SHARED_FILES でその場所を指定することができます。

    移行するファイルの移行先をカスタマイズするには、MULTIUSERCOMMONDIR 設定を使用します。

    シミュレートされた Notes® マルチユーザーインストールから移行する場合は、cscript コマンドの実行時にコマンドプロンプトでこのオプションを指定できます。

    MIGRATE_SHARED_FILES migratefilelist.txt テキストファイルの名前と場所を指定します。このファイルには、移行先の共有ディレクトリーに移行するその他のファイル (ユーザー定義のテンプレートや、Notes® でインストールされなかったファイルなど) がリストされます。

    この設定を使用するには、前述の設定 MIGRATE_SHARED_DIR の値を True に設定する必要があります。

    シミュレートされた Notes® マルチユーザーインストールから移行する場合は、cscript コマンドの実行時にコマンドプロンプトでこのオプションを指定できます。

    MIGRATE_USERDATA_DIR この設定を使用するのは、シミュレートされたマルチユーザーインストールから真のマルチユーザーインストールに移行する場合のみです。
    • True - ユーザーの個人データファイル (ユーザー ID、テンプレート、データベースなど) が、MULTIUSERBASEDIR 設定で指定されたディレクトリーに移行されます。値は、ユーザーごとに true に設定する必要があります。
    • False - 個人データが移行されません。

    NOTES.INI ファイルから移行元データディレクトリーの場所が判別されたら、移行される各ファイルがこのデータディレクトリー内にあるかどうかと、これらのファイルを操作する許可がツールにあるかどうかが確認されます。

    StartUp Group または RunOnce レジストリキー内に、各ユーザーが移行後に初めて Windows にログインした際にデータを自動的に移行するスクリプトを実行するためのバッチファイルを作成できます。各ユーザーの移行元データディレクトリーが個別のドライブ上にある場合は、ユーザーごとに個別にツールを実行する必要があります。

    MULTIUSERBASEDIR に値を設定しない場合は、デフォルトのユーザーデータパスで指定された場所にデータが移行されます。Notes® 8.5x 以前のデフォルトパスはC:\Documents and Settings\username\Local Settings\Application Data\Notes\Data です。Notes® 9.0 移行のデフォルトパスは次のとおりです。C:\Documents and Settings\username\Local Settings\Application Data\HCL\Notes\Data

    シミュレートされた Notes® マルチユーザーインストールから移行する場合は、cscript コマンドの実行時にコマンドプロンプトでこのオプションを指定できます。

  5. MUMigrationAssistant.ini ファイルを保存して閉じます。
  6. MUMigrationAssistant.vbs スクリプトを閉じます。
  7. 設定ファイルで DRYRUN オプションの値を true に設定した後、コマンドプロンプトで以下のように入力して、移行のテストを実行します。
    cscript MUMigrationAssistant.vbs configuration_setting=value

    ツールを実行すると、移行が行われる前に、設定ファイル内の設定が確認されます。notes.exe ファイルと notes.ini ファイルの場所を指定する NOTESPATH 設定と CURRENTINIPATH 設定が無効になっている場合は、移行が停止します。

    注: コマンドラインと設定ファイルで指定された設定間で競合が発生した場合は、コマンドラインの設定が優先されます。
  8. 出力されたレポートを確認し、MUMigrationAssistant.ini ファイルの調整が必要かどうかを判断します。必要な場合は、この時点で調整します。
  9. 設定ファイルで DRYRUN オプションの値を false に設定した後、コマンドプロンプトで以下のように入力して、移行を実行します。
    cscript MUMigrationAssistant.vbs configuration_setting=value

    NOTES.INI ファイルが共有データディレクトリーに作成されます。元の NOTES.INI ファイルは、MULTIUSERBASEDIR 変数で指定されたディレクトリーに移動されます。新しいデータディレクトリーは MULTIUSERBASEDIR 変数で指定されたディレクトリー内に置かれ、MULTIUSERCOMMONDIR 変数で指定されたディレクトリーが共有ディレクトリーになります。

タスクの結果

Install.log ファイルにアクティビティが記録されます。このファイルは、インストールユーザーの My Documents フォルダと、移行後のユーザーのデータディレクトリー内にあります。

例: シミュレートされたマルチユーザーインストールから真のマルチユーザーインストールへの移行
このシナリオでは、シミュレートされたマルチユーザー環境と、共通およびユーザー固有のデータファイルが格納された共有ドライブを使用して、1 台のコンピュータで複数のユーザーが作業を行うように構成されています。
  • NOTES.INI ファイルは H:\data\notes.ini です。
  • Notes® インストーラーの setup.exe ファイルは、C:\Program Files\HCL\Notes にあります。
  • ユーザーのデータディレクトリーは H:\data です。
  • 共有データディレクトリーは C:\notes\common\Notes\data です。
  • migratefilelist.txt ファイルは、移行ツールの実行元ディレクトリーにあります。このファイルでは、以下の追加ファイルの移行が指定されます。
    • H:\data\template1.ntf
    • H:\data\template2.ntf
    • H:\data\template3.ntf

以下の該当するユースケースに基づいて、ユーザーを移行します。

ユースケース 1 - 次のすべてのバージョンでの単純なシングルユーザーからマルチユーザーへの移行: Notes®

このユースケースでは、Notes® 8.5.1 はシングルユーザーモードでインストールされ、プログラムファイルは C:\Program Files\HCL\Notes に、データファイルは C:\Program Files\HCL\Notes\Data にインストールされています。

ツールを実行して、以下を行います。
  • 真のマルチユーザーインストールにするためにレジストリエントリを移行します。
  • すべてのユーザーが使用する共通ファイルを C:\Documents and Settings\AllUsers\Application Data\Notes\Data に移行します。
  • ユーザーのデータファイルと NOTES.INI を C:\Documents and Settings\username\Local Settings\Application Data\Notes\Data に移行します。

MUMigrationAssistant.ini に指定されている値は、次のとおりです。

DRYRUN=true
CURRENTINIPATH=C:\Program Files\HCL\Notes\Data\notes.ini
NOTESPROGRAM=C:\Program Files\HCL\Notes
IS_SIMULATED_MODE=false
MIGRATE_REGISTRY=true
MIGRATE_USER_REGISTRY=true
MIGRATE_SHARED_DIR=true
MIGRATE_USERDATA_DIR=true
MULTIUSERCOMMONDIR= 
MULTIUSERBASEDIR= 
注: MULTIUSERBASEDIR と MULTIUSERCOMMONDIR は、空白のままにしてください。

ユースケース 2 - シミュレートされたマルチユーザーから真のマルチユーザーへの移行 - すべての共有データを移行するための最初のツール実行

このユースケースでは、Notes® 8.5.1 はシングルユーザーモードでインストールされていますが、各ユーザーのデータディレクトリーがネットワークドライブにマップされています。プログラムファイルは C:\Program Files\HCL\Notes にインストールされ、データファイルは H:data にインストールされています。すべてのユーザーの移行元データディレクトリーがローカルであるか、共通ネットワークドライブ上にある場合は、ツールを実行して、その Notes® クライアントインスタンスの全ユーザーのデータを移行先データディレクトリーに移行することができます。

ユーザーのマップ済みデータドライブへのアクセス権を持つシステムから、管理者として MUMigrationAssistant を実行し、以下のことを行います。
  • 真のマルチユーザーインストールを指定するように HKLM レジストリ設定を変換する
  • 共有データディレクトリ C:notescommonData を作成する
  • すべてのユーザーの共通ファイルを共有ディレクトリーに移行する

MUMigrationAssistant.ini に指定されている値は、次のとおりです。

DRYRUN=true
CURRENTINIPATH=H:\data\notes.ini
NOTESPROGRAM=C:\Program Files\HCL\Notes
IS_SIMULATED_MODE=true
MIGRATE_REGISTRY=true
MIGRATE_USER_REGISTRY=false
MIGRATE_SHARED_DIR=true
MIGRATE_USERDATA_DIR=false
MULTIUSERCOMMONDIR=C:\notes\common
MULTIUSERBASEDIR=H:\data

ユースケース 3 - シミュレートされたマルチユーザーから真のマルチユーザーへの移行 - 各ユーザーがそれぞれのデータを移動するためにログインしたときの後続のツール実行

このユースケースでは、Notes® 8.5.1 がシングルユーザーモードでインストールされていますが、各ユーザーのデータディレクトリーはマップされたドライブ上にあります。管理者は、ユースケース 2 と同じように、Notes® クライアント上のシングルユーザー設定をマルチユーザーインストールに移行しました。ここでは、各ユーザーがシステムにログインします。

ユーザーはログインして MUMigrationAssistant を実行し、以下を行います。
  • ツールを実行したユーザーの HKCU レジストリエントリを移行します。
  • このユーザーのデータをマップされたドライブからデフォルトの場所 (C:\Documents and Settings\username\Local Settings\Application Data\Notes\Data) に移動します。
MUMigrationAssistant.ini に指定されている値は、次のとおりです。
DRYRUN=true
CURRENTINIPATH=H:\data\notes.ini
NOTESPROGRAM=C:\Program Files\HCL\Notes
IS_SIMULATED_MODE=true
MIGRATE_REGISTRY=false
MIGRATE_USER_REGISTRY=true
MIGRATE_SHARED_DIR=false
MIGRATE_USERDATA_DIR=true
MULTIUSERCOMMONDIR=C:\notes\common
MULTIUSERBASEDIR=
注: MULTIUSERBASEDIR は空白のままにしてください (これがデフォルト値です)。